イサヤー・ウッダ
Isayahh Wuddha
私のプロフィールについてご報告したいことがあります。
活動初期のプロフィールに、『第二次世界大戦中、日本統治下の台湾にて徴兵され衛生兵として従軍した台湾人の祖父』がいると公表していましたがこれは事実ではありません。
活動を始めた当初、アーティスト名とプロフィールを考えて決めました。無名なアーティストが作った作品がどれだけ通用するのか挑戦したかったからです。映画や漫画の主人公を創作する様な気持ちもありました。その時期に観た台湾の映画や読んだ本に感銘を受け、台湾に興味を持ちリスペクトとして台湾と日本にルーツがあるとしました。
このことで台湾の方々、台湾にルーツがある方々、それぞれの自国を大切に思っている方々、またルーツを複数持ち、それによって差別を経験されたり様々な葛藤を持たれている方々に対し、裏切り、不快な思いをさせてしまうことについて考えが及ばず、かつ「自身のルーツを偽る」という行為を助長しかねない軽率な行動だったと反省しています。
台湾と日本のルーツを持つミュージシャンという想定は、作品を多文化的に受け止めてもらいたいという動機がありましたが、そのことが結果的に文化盗用へと至ってしまいました。
特に文化盗用に関しては経歴詐称も含みながら向き合わなければならない問題があります。
文化盗用という言葉については自分自身答えを模索している状態になりますが、ここでは「強者の側から弱者の文化を使い、本来の意味から歪めて使うこと」と理解した上で、自分自身の文化盗用について照らし合わせていきました。
「台湾にルーツがある」という言葉を日本人の自分が使うことは、歴史的にみて第二次世界大戦時に台湾を植民地化していた強者の側の日本から侵略・搾取されていた弱者の側の台湾という立場を考えると身勝手な偽りになります。
またアジア・エキゾチシズムを連想させ、自身の作品の販売をしたことは、自分に無い要素を横取りした歪んだ行為でした。
このことについて幾人かの友人から指摘を受けていながらも、誠実に受け止めず、対応を今までしてこなかったことは私の文化盗用への理解不足、怠慢でしかありません。台湾が好きだから、リスペクトから、では理由にならない問題でした。
私は文化盗用について長く誤認していました。この考えは時には芸術における異文化からの影響をミックスした新しい試みに対しても否定的に扱われていたからです。
しかし文化盗用が指摘しているのは、多文化に囲まれて生活している者としての意識の問題、対象への向き合い方だと思いました。その解釈を広げていくと普段日常で接する全てのモノ・コト・人へと繋がり、さらにそれは目の前にあるコーヒーカップが、どこで、どんな人が、どんな状況で、どんな思いで作ったものなのかと思いを馳せることに繋がっていきました。
私たちの日常を取り巻く些細なことから大きなことまで、意識を向けて理解し行動すること、その先に未来があること。これが文化盗用をきっかけに私がいま気付けたことです。
今回の件に関して明確な説明をしていない自分が何を言っても信用できなかったと思います。聴いてくださった方々を裏切り不快な思いをさせてしまったことについて、本当に申し訳ありませんでした。
今後は多方面から物事を見て、自分にも、それぞれの人生を歩んできた方々にも向き合い考え続けていきたいと思います。
読んで下さりありがとうございました。
Isayahh Wuddha
イサヤー・ウッダと朝焼けの仮面ライダー
TEXT & PHOTO : 松永良平(リズム&ペンシル)
さっきまでイサヤー・ウッダと会っていた。2021年、夏の京都の夜。
鴨川の三角州の高台に腰掛けて。
目の前では、鴨川の浅瀬で遊ぶ学生たちの姿。じとじとと続くコロナ禍で、なくなったはずの夏を、夜の幻のように見ながら。
彼と会いたくなって連絡を取ったのは、サード・アルバム『DAWN』をいち早く送ってもらっていたから。去年の暮れにセカンド・アルバム『Inner city pop』が出たばかりで、まだ半年ちょっとしか経ってない。もっと言えば、ファースト・アルバム『Urban Brew』をぼくは先に出ていたカセットではなく、輸入盤のアナログで去年の初夏に知ったから、1年ちょっとの期間でイサヤー・ウッダを3作立て続けに聴いていることになる。
謎めいた経歴やキャラクターが人を煙に巻く架空のものであることは、わかる。チープなシステムによる宅録ファンクなんて、ちょっとしたツールと音楽のセンスがあれば、誰だってできる匿名的な遊びなんだろう。だけど、リリースされる作品を聴くほどに思ってしまう。きみは意外と本気なんじゃないの?
フェイクでいいじゃん、という言葉では足りなく感じるエモーション。短い時間で3枚もアルバムを出すような音楽家は本来もっとやっかいな過剰さを抱えているものだけど、彼の作る音楽にはさらけ出さないデリカシーが宿る。アウトプットをおそれない、という開き直りとは違う。
どうせ全部ウソなんだから、もっと派手にやればいいんじゃないの? いや、ウソの人格、ウソの時間だからこそ本当が出るの?
70年代のグラムロック・バンド、T-レックスに『ズィンク・アロイと朝焼けの仮面ライダー』(1974年)という不思議なアルバムがある。バンドとして低迷期に差し掛かっていて、ピンとこないアルバムという評価もある。威勢はいいんだけど、窮地を抜ける新しい路線の正解がわかってない感じ。T-レックスで聴くべきアルバムは他にもたくさんある。まあね、そうね。
だけど、そのアルバムで展開される抜けの悪いファンクやバランスの良くないアレンジを、妙に愛おしいと感じるときが少なからずあった。それはもしかして、人生には景気がよくて絶好調な時よりも、ままならない時間のほうが多いということを(意に反して)音楽で証明している、ということなのかもしれない。だから、仮面ライダーは朝焼けに立たないといけないのね。
偶然だろうけど、イサヤー・ウッダの新作のタイトルは『DAWN』。日本語の意味は「明け方」だ。『DAWN』は『ズィンク・アロイと朝焼けの仮面ライダー』よりもずっとハイブリッドでかっこいいアルバムだけど、根底にある、うまくいかないことへのまなざしみたいなものは通じてる。いままでいちばんイサヤー・ウッダ自身が見える作品かもしれない。
『ズィンク・アロイと朝焼けの仮面ライダー』でマーク・ボランが歌った「Teenage Dream」と、イサヤー・ウッダが『DAWN』で歌う「HOLDONME」は、全然違う曲だが同じように美しく聴こえる。僕がDJなら続けてかけてもいいかも。架空を生きる者の本当のウソ泣きに祝福あれ。
そのとき、鴨川で遊ぶ学生たちが安い打ち上げ花火を何発かぶち上げた。
Isayahh Wuddha
Isayahh Wuddha is a Kyoto-based drum-machine soul SSW,
whose music, produced on vintage cassette tape MTRs, is both addictive and pleasurable, leading the listener on an inner trip.
He music has been played on the radio by British DJ Giles Peterson,
and he was selected as one of the 10 groups for the special feature
"New Generation of Japanese Music 2020" in the September 2020 issue of Music Magazine.
Their second album "Inner city pop" released in December 2020 was selected as one of the top 5 best albums of "Best Album 2020" in ele-king Vol.26. He is an artist who is expected to be active on a global scale in the future, echoing psychedelic hip-hop whose whereabouts are still unknown.
He has released his first album "urban brew" (2019), second album "Inner city pop" (2020), first single "I shit ill" (2021), and is scheduled to release his third album in early summer of 2021.
京都在住の密室ドラムマシーン・ソウルのSSW。
ヴィンテージ・カセットテープMTRにて制作された楽曲は中毒性と気持ち良さを併せ持ち、
聴くものをインナー・トリップの世界へ導く。英DJジャイルス・ピーターソンのラジオでプレイされ、
ミュージック・マガジン 2020年9月号 特集「日本音楽の新世代 2020」 の10組に選出。
2020年12月にリリースした2nd album『Inner city pop』は
ele-king Vol.26 の「ベストアルバム2020」にてベスト5に。
未だ所在不明なサイケデリック・ヒップホップを響かせながら、
今後世界規模での活躍が期待されるアーティスト。
現在まで1st album『urban brew』(2019)、2nd album『Inner city pop』(2020)、1st single『I shit ill』(2021)、2021年8月11日3rd album『DAWN』リリース!
Shows, Events and Tours
2022年1月22日
KYOTO
@ZAC BARAN
open18:30
start19:00
charge¥2000+1D
2022年2月27日
KYOTO
@NEGAPOJI
詳細未定
Contact me for gigs!
© 2021